効率がいいからっていい気になってんじゃねえぞ

小さい頃からピーマンが苦手だ。

一人暮らしを始めてからは普通に食べられるようになったが、別にヤツの美味しさに目覚めたとか好きになったとかでは断然ないしあんなやつ極力食べたくない。

 

そもそもヤツは臭いし苦いし美味しくないし食べ物として良いところなんて全くない。

自炊するようになって心底思うようになったがヤツは種がめんどくさいし本当に何も良いところがない。

せいぜい、緑黄色野菜であることと調理のレパートリーが割と多いところと冷凍保存しても冷凍庫が臭くならないところと長時間火を入れなくても食べられるところと1袋に4つくらい入ってて丁度いい量であることくらいしかない。

 

こんなに嫌いなのに野菜を継続して食べるにはヤツが1番効率がいい。効率の良さだけでヤツを選んでいる。本当に屈辱的だ。

お前たちは「そんなに言うならヤツ以外の野菜でいいじゃないか」と思うだろう。だが残念、人参は火を通すのに時間がかかるしほうれん草などの葉物は冷凍するとくたくたになりすぎる。継続するなら負担が無いほうがいいし好きなものなら美味しく食べたいのである。結果ヤツを選ぶしか選択肢はないのだ。

悔しい。こんなに美味しくないヤツなんて、食べなくていいなら絶対食べないのだ。しかし、野菜を買ってきて処理して継続的に食べるとなるとヤツが1番効率がいいのでそうせざるを得ない。

スーパーに行って野菜コーナーをじっくり眺めるたびに歯噛みして悔しく思いながらピーマンを睨みつけつつカゴに入れ会計を済ませる。こんな美味しくないやつに頼らなければならないなんて、なんて憎らしいんだと眉を寄せながら帰路につき、キッチンでヤツを処理しジッパー袋に詰め冷凍庫に仕舞う、という一連の作業を厭わしい気持ちでいっぱいになりながら終わらせる。

 

こんなに憎たらしいヤツを食べることが出来るのは嫌々ながらも口に運んだことでなんとなく慣れ始めたからであって、これでもしヤツとの距離が開いて疎遠になったら私はピーマンともう一度和解できる気がしない。今度こそ絶縁である。

ヤツに負けるもんかと口に運ぶより対抗手段は無いため顔をしかめながら咀嚼するしか私にできることはないのだ。